こなたよりかなたまで〜感想〜
さらに詳しく知りたい方はF&C FC01ホームへ
http://www.fandc.co.jp/
Play期間、2004年 春
注意
今までになく、激しくネタバレしておりますので未プレイの方は「本当によく考えて」からお読み下さい。
なんせ予備知識なしでやった方がよいと思われるソフトですから。
ネタバレなしのすばらしいレビューをお探しの方はリンク先サイト様にあるむぅさんの運営する「むぅのいえ」のすばらしいレビューをお読みください。(丸投げ)
ダメダメな私の能力ではネタバレ無しでは語れませんので。。(オイ
それでも、購入を迷っているとかF-15のダメダメな意見でもいいから聞きたいと言う方はお入りください。既プレイの方はもちろんすぐ入ってもらっていいのですが。
いきなりのネタバレで恐縮ですが、このゲームは私に「死生観」について考えさせてくれたゲームであります。
主人公の遙彼方(絶対に取って付けた名前ですね)は、末期のガンでして余命が幾ばくもありません。一方でそこに突然現れた、クリステル-V-マリー(クリス)は、ほぼ永遠に死なない吸血鬼でして、永遠の命と消えゆく命が奏でる切ないストーリーでした。
シナリオ
このゲームはシナリオのためにあるようなものです。
もうホントに「シナリオの神降臨」といった感じです。
あの短いテキストでよくあれだけのストーリーを詰めました。
F&C作品はF-15は好きで結構、良くプレイするのですが、いつも「シナリオが足りん」と思っているのですが、今回は「F&Cさんやれば出来るではないですか(外注ですが)」と思わせてもらいました。
まず、このシナリオの良いところは「語り過ぎていない」ところです。
もちろん、このことには諸説ありまして、語りが少ないとおっしゃる方も多いです。
実際、他のレビューサイトさんでも評価が二分しています。
ですが、私としては語り過ぎていないことが、良いところだと思います。
なんといいますか、考えさせるテキストになっているのですよね。
さらに短いからダレないですし。(そっちが本音かダメ人間)
それから最後はあるエンドを除いて主人公は死ぬのですが、死ぬ瞬間まで描いていないので、とても悲しいけれど幸せな気分で終われるのです。
これもまた先ほどの語りがどうのということと重なりますが、私的には死を描きながらもソフトに終わっている点が、良かったです。
ほかには、吸血鬼や魔物の退治屋とかいう非現実の物が出てきているのですが、その割に説明が少ないという意見もありますが、かえって説明をし始めるとそちらが主題になってしまいそうなので、あえて説明は省いたのだな〜。と思っています。
それに主人公がそれを受け入れてしまうのも死を目前にしているからこそだと思えば割り切れますし。
テキスト
テキストも誤字、脱字などは無く問題ありません。
それから、これはストーリーとも被りますが、テキストがとつとつと語られ泣きを強要していないのが、逆に感動を誘います。この点は私的には何となくNHKのプロジェクトXに似ているような気がします。こういうテキストって結構好きです。
システム
設定の点では全く問題なし。一通りそろっています(ただ、いつものF&C標準システムに比べると手抜きな面が。。低価格だからと割り切りましたがね)。縦書きか横書きかも選べるのでノベル風のゲームとしては、こういった点は評価できますね。
ただし、気のせいか重い気がします。うーむ。でも家のPCも古いし相性の問題かも知れませんがね。
それから、CDが一枚とかなり容量は軽いのですが、代わりにプロテクト入りでROMレス起動はできません〜orz。
絵
絵も私的には好きな方なので、全体としては良かったです。ただ、安定が無いといいますか、パッケージの絵と実際の絵とかとが何か違う感じを醸し出させていますね。せっかくのいい感じの絵なんですから、もう少し描きこんで下さいよ〜。それからCGが少ないです。でもまぁ、必要と思われる一通りのCGは揃っていますから、そんなに大きな問題でも無いですが。
音楽
これはもう「I've sound降臨!!」といった感じでして
さすがは道産子企業〜良くやった万歳〜ヽ(゚∀゚)ノ
主題歌の「Imaginary affair」はもう今までの○○ゲーの主題歌で五本の指に間違いなく入ります。
それもまた、何とも言えないほどシナリオとマッチしたフレーズとKOTOKOさんの歌、さらにはそれを引き立てるスローなバラード調のメロディ。サイコーです。普段は気にもとめない何気ない日常の大切さがわかります。
とくに個人的には、
二番の「ここからみえる明日にエールを送ろう〜降り止まない雨などここにはないから〜」と
最後の「ここから見える明日の絵日記描こう、平凡だってゆがんでたってそれが証し〜」
の辺りが気に入っています。
また、エンド曲の「こなたよりかなたまで」も、終わりを思わせる同じくスローな感じの曲ですばらしいの一言。
どちらもゲームをプレイされない方でもオープニングムービーでもダウンロードして聞いて欲しいくらいです(Imaginary affairの一部しか聞けませんが。)。プレイ後に聞くとシナリオを思い出して泣けます。
それから挿入曲もすばらしいの一言。場面に合った曲が多数。ハズレや捨て曲なしの配備です。
キャラクター
これに関しては、いい人がいっぱいです。
主要なキャラはもちろん、一回くらいしか出てこない喫茶店のマスターや宝石屋のご主人達も、かなりいい人です。
あんな店があったら私も常連になります(マテ
ほかにも途中で主人公が最後を看取るおじいちゃんとか主治医の先生とかも良い人ばかりです。
それから主人公の遙彼方も死を目の前にしてのあの生き様。なかなか普通の人では出来ないような生き方ですが、あれにはもう「感動」です。いろいろとよく考えて行動できるなかなか居ない主人公であります。
ホントに主人公良い奴すぎだーコンチクショウ。
私的に今までのゲームの主人公の中でも五本の指に入る良さであります。
でも一方でこんな主人公ですから合わない方もいらっしゃると思いますので、まず、居ないとは思いますが、もしも購入前にこの感想をご覧になっている方がいましたら、主人公とうまが合うかを考えて購入してくださいね〜。
ちなみに主人公の彼方は出来る限り学校にも通い、その日まで普通を突き通そうとしているシーンが描かれているのですが、F-15も「地球最後の日に何をするか」と聞かれて、「普通に大学に通学」と答えて友人一同に笑われるような人間ですから、彼方には結構合いました(笑)。
もちろんヒロインたちも感動を与えてくれるキャラばかりです。
メインヒロインのクリスは、途中で性格が変わるのですが、すると
━━━(゚∀゚)━━━━(゚∀゚)━━━━キターーーーー
ああいうのサイコーって感じです。
他にも
退治屋の九重さん〜。照れた表情が萌え萌え〜(オイ
看護婦のいずみちゃんもああいう看護婦さん最高です。ああ、ちなみに最高というのはやましい意味ではなく、ターミナル医療(末期患者さんへの医療)に関わる看護婦さんとしてすばらしい方という意味です。ああいう医療現場に従事する方のお気持ちが少し分かった気がします。
もちろん、アレも私的にはサイコーでしたが(マテ
一緒にいる優もあんな小さい子なのに病気と闘ってさらに、まだ若いのにあんな事まで考えていると思うと色々と考えさせられます。
佳苗はシナリオが少し鬱なので、どうも印象が薄い感がありますが(脳内抹消)、キャラとしては良いと思います。
私的にはあのシナリオだけはもう少し工夫して欲しかったです。せっかくの良い幼なじみキャラなのですから。ただ、一方で優の場合の逆といいますか。これからを生きる人間への接し方について考えさせられる大事なシナリオでもありますので、あのままでも良いのかもと思ったりも。。
友人の耕介も彼方をいつも心配している良い奴でして、今回はいいひとずくめでしたね。
声の方も私的には特に違和感も無くよかったと思います。
それ以外
シナリオの各場面が「楽章として区切られている」のですが、これがイイです。
人生って色々な表現がありますが、たとえによく自分が主人公の舞台だとかいう人がいますよね。表現は違いますが、一つの楽曲だと思う考えもアリだと思うのですよ。
さらに一番のさわり(曲のさわりとは本来、聞かせどころの事です)である最終楽章の主題がExcellentです。
クリス標準エンドは「金色の桜、輝ける春:独唱」(F-15の知らない曲ですが。。)
クリスgoodエンドは「こなたよりかなたまで」(まんまです。)
「アンコール:フィンランディア:合唱」(シベリウスの名曲)
佳苗エンドは「この素晴らしき世界」(聞いたことがあるような。でも忘れた(バカ)
いずみ・優エンドは「ゲームの達人」(F-15は聞いたことないな)
二十重エンドは「ラストダンスを私に」(洋楽であるはずですが、F-15は聞いたことがないです)
とまあ、この様になっていまして、さらにこれらが、シナリオと関連があるのだから興味深い。
またしても激しくネタバレですがクリス標準エンドでは、なぜクリスが来たかが明らかになります。その上、彼方が亡くなるシーンが唯一描かれていて、桜の散る時期ですし、クリスは金色の人ですからこの曲でしょう。
ちなみに桜が咲くのは5月ですよね(私だけ。。)。
goodエンドは、「こなたよりかなたまで」の意味がよく分かります。ただなぜアンコールがフィンランディアなのかは歌詞がフィンランド語でバカなF-15には意味が不明なため不明ですが、なにせ名曲ですし聞いていると不思議と合っている気もします。それから挿入曲のささやかな一歩はフィンランディアをアレンジした曲ですのでお持ちの方は聞いてみてください。
クリスシナリオは「永遠を生きる命の寂しさと消えゆく命の儚さが描かれていると思います。」
佳苗エンドは、死を目前にした彼方と、その彼方を好きになった佳苗の物語がこれから続くというところで終わっているのでこれも合っています。
佳苗シナリオは「もう長くはいられない人が、これからを生きる人とどう接すればよいのか、その苦悩が描かれていると思います」
いずみ・優エンドでは、人生の勝者、敗者とはなんだろうか?ということが、人生をゲーム(チェス)になぞらえて語られているので、主題とのマッチングも良いです。
いずみ・優シナリオは「人は最後の瞬間に何を思うかを描いていると思います」
二十重エンドは、最後のダンスシーンに全てが集約されていますから、まさに主題通りであります。
二十重シナリオは「人は人に何を残せるかを描いていると思います」
どのエンドも思い出すと、もう感動の渦に巻き込まれそうです。
とまあ、今回も勝手な考察や想像を色々ネタバレを交えて書きましたが、このゲームを一言で表すと
「見つめてみよう死生観」
です。人間を含めて全てのものにとって死はさけられないものであります。また、それはなかなか考えにくく考えたくないものですよね(特に私のような若年者層には)。
しかし、誰しもいつかはその日が来るのです。それを色々な視点から描いている事に感銘を受けました。一方、それでいてストレート過ぎず、取っつき易いことにも感服しました。
プレイ後には必ず何かを胸の奥に残してくれることと思います。
最後に小ネタですが、
幼少時の主人公がクリスを口説いた文句に
「けっこんしようは、おんなのひととおともだちになるひっさつわざ」
これは、もしも意中の女性が現れたときには使わせてもらいますよ彼方君!(笑)
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